「長男だけど墓継ぎたくない」
「墓なんていらない!」
「遠すぎて継げない」
昔とは価値観が違ってきていて、お墓を継ぎたくないと思ってる長男さんがとても多いです。
費用はかかるし、お寺との付き合いも嫌だし、何しろ面倒くさい・・・というのが主な理由です。
実は、お墓は長男が継がなくても大丈夫なんです。
誰がお墓を継ぐべきという法律もないですし、世の中にはお墓を継いでない長男さんがたくさんいます。
そこで、長男がお墓を必ず継がなくても良い理由や、どうやってお墓を次世代に引き継いでいけばいいのかなど、詳しく解説します。
長男だからって、何もかも押し付けられるとつらいですよね
参考:墓じまいの一般的な方法
- 長男が墓を継がなくても問題ない理由
- 次男や他の親族が墓を引き継ぐ方法
- 墓じまいの手順や費用の詳細
- お墓を放置した場合のリスクと対処法
長男がお墓を継がないのはアリ?
- お墓を継ぐ人は決められてない
- なぜ長男がお墓を継ぐと思われてるのか?
- お墓の変遷
- 現在は次男が継いでも良い
- 祭祀承継者を決める方法
- 祭祀承継者が1人の理由
- 長男以外の親族が墓を継げない時
- お墓の相続を放棄できない理由
- 引き継ぎたくない人は引き継いではダメ
- お墓を放置するとどうなるのか
お墓を継ぐ人は決められてない
長男が必ずお墓を継がなければならないという法律は存在しません。
お墓に関する法律は、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年)」と「民法第897条」です。
墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
第5条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。(引用元:厚生労働省)
民法第897条
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。(引用元:e-Gov法令検索)
上記の2つを簡単にした内容はこちらです。
- 遺骨を墓地以外に埋めてはならない
- お墓などの祭祀財産は1人が引き継ぐ
- 祭祀承継者は、遺言、慣習、裁判所で決められる
「お墓は長男が引き継ぐべき」とは、どこにも書かれていません。
お墓を継ぐ人を決めた法律はないです
なぜ長男がお墓を継ぐと思われてるのか?
では、なぜ「長男はお墓を継ぐべき」と、多くの方が当然のように考えられているのでしょうか。
古くからの慣習や家族制度に根付いているとよく言われますが、実は1898年に施行された明治民法が原因です。
明治民法には、「家制度」というものが定められていました。
長男が自動的に戸主になり、お墓に対する義務や責任も戸主がひとりで背負いました。
この明治民法のおかげで、長男が家とお墓を継ぐべきという考えが広まりました。それが今でも根底にあります。
特に、昔は長男が家督を継ぎ、家を守る役割を果たしていたため、墓の管理も長男が担うのが一般的でした。
なぜ、家制度がつくられたのか?
江戸時代までは職業の自由がなく、農家ならずっと農家、武士ならずっと武士でしたので、「〇〇家」という名前で財産も家族も使用人も一括りにされていて、家長が代表となっていました。
明治時代になって職業選択の自由ができて、それまでの大規模な「〇〇家」ではうまく行かなくなってきたので、家長の権限と所属する人を縮小したんです。
その結果、次男や三男は家を出ないといけなくなり、自分で新しい家やお墓を作るようになったんです。
お墓がたくさん作られたのが高度成長期でしたから・・
お墓の変遷
明治民法の家制度によって、お墓も形式が変わりました。
お墓の変遷
- 古代~室町 身分の高い人は古墳、庶民は放置や土葬
- 江戸時代 庶民もお寺に個人墓(一人墓)や夫婦墓、もしくは合祀
- 江戸末期~ 先祖代々の墓が作られ始める
- 明治時代~ 〇〇家の墓があらわれる
- 1970年~ 〇〇家の墓が急増
先祖代々の墓というのはごく最近のものだと言えます。
実は、今のお墓の形は江戸時代にはじまり、しかもお金持ちだけでした。
なので、長男がお墓を継がないといけないという慣習は、明治の終わりから大正、昭和20年ころまでの間にできたもので、そんなに古いものではないです。
家やお墓を守れってよく言われるけどね
現在は次男が継いでも良い
1947年の日本国憲法の施行により、家制度が廃止されました。
その結果、現在では法的にも長男に限らず、次男とか三男が墓を継いでも問題ありません。
家族の状況に応じて、最適な人が墓を継ぐべきだとされています。
親族が離れて暮らすのが多い現代では、墓参りや管理がしやすい人が継承者になる方が理にかなっています。
長男が義務としてお墓を継ぐのではなく、お墓を守っていける人が継ぐのが自然です。
誰が継いでも良いんです
祭祀承継者を決める方法
お墓を継いで守っていく人を、祭祀承継者と呼びます。
祭祀承継者は、祭祀承継者の遺言か、親族の話し合い(慣習)によって決められます。
もちろん、祭祀承継者になりた人がいれば、その人にまかせるのがいちばんです。
この話し合いを行う際には、将来的な負担や、生活状況を考慮に入れるのが重要です。
遠方に住んでいる人が継いだり、いずれ墓じまいしなければならない人に任せるのは、ちょっと考えものです。
問題の先延ばしとか次世代への丸投げはやめたほうが良いです
祭祀承継者が1人の理由
祭祀承継者は基本的にひとりです。理由は、墓の管理責任を一元化するためです。
複数の人が管理を共有すると、管理責任や費用負担の分配が曖昧になるのはもちろんですが、お墓に入った人の子孫がかならず困ります。
どういうことかというと、長男と次男の二人が祭祀承継者になった場合、いずれその二人は同じお墓に入りますよね。
問題はその後です。長男の孫と次男の孫の行き来があれば良いのですが、たいがいは会うことはないはずです。
そんなときに、同じ日にその孫たちがそれぞれの家族とともにお墓参りしたらどうでしょう?
もしくは、その孫たちは同じお墓に入れるのでしょうか?
現在のお墓のシステムだと、祭祀承継者をひとりにして、代々の祭祀承継者がそのお墓に入るように決めておいたほうがスムーズにいきます。
そんなにたくさんの人は入れませんしね
長男以外の親族が墓を継げない時
長男以外の親族が墓を継ぐことができない場合、最も現実的な解決策は墓じまいです。
たとえば、次のような場合です。
- 一人息子で家族も子供いない
- 娘しかいない
- 次男も三男も海外やとんでもなく離れた場所にいる
現在の日本は少子高齢化が進んでおり、こういった家庭がとんでもなく増えていくと見られています。
- 棒グラフ:総人口
- 赤折れ線:65歳以上
- 青折れ線:75歳以上
- 黒折れ線:0~14歳
この統計は平成30年までですが、令和6年の現在、もっと顕著になってると考えられます。
墓じまいせざるをえない状況なのかもしれません
お墓の相続を放棄できない理由
お墓は一般の財産とは異なり、法律上「祭祀財産」として別物に分類されます。
相続放棄を行っても、祭祀財産は放棄できません。理由は、仏壇や遺骨は捨てられないからです。
相続人が誰もいない場合は、残された親族の話し合いで祭祀承継者を必ず決める必要があります。
祭祀財産を放棄したいときには、墓じまいして遺骨を合祀墓などの管理が必要ないところに移すしか方法がないです。
国もお墓を放棄されても困ってしまいます
引き継ぎたくない人は引き継いではダメ
お墓の管理を引き継ぎたくないと感じている人は、無理に引き継ぐべきではありません。
理由として、引き継ぎたくない人が無理に責任を負うと、いずれ無縁墓になるからです。
無縁墓にならずとも、荒れ果てた墓地とか捨てられた墓地となり、親族や付近の住民からかならずクレームが来ます。
なので、引き継ぎたくないと感じているときには、他の親族に相談して別な人に頼むか、墓じまいを検討する方が適切です。
親族から押し付けられそうになったら、その人に任せてみては・・・
お墓を放置するとどうなるのか
お墓を放置すると、草が生え放題でネズミや動物の住処になり、荒れ果てた墓地になります。
とうぜん近所から文句を言われたり、お寺や霊園からは管理料の請求やクレームが来るはずです。
手続きを踏まれて撤去された場合には、撤去費用や溜まっていた管理料、損害費などの訴訟も起こされる可能性があります。
無縁墓となったときには最終的に撤去され、遺骨はどこかに合祀されます。
負の連鎖は誰かが断ち切らないといけません
長男が墓を継がないときの選択肢
- 長男が継がない時の選択肢は2つ
- 現祭祀承継者に遺言してもらう
- 現祭祀承継者に墓じまいしてもらう
- 墓じまいする手順と費用
- 墓じまいの費用は誰が払う?
- お金がない時は?
- 墓じまいのタイミングは?
長男が継がない時の選択肢は2つ
長男が墓を継がない場合、選択肢は「他の親族が継ぐ」か「墓じまいをする」の2つです。
これらの選択肢を家族で話し合い、どちらが最適かを判断することが重要です。
他の親族が継ぐ場合、墓の名義変更や管理費の引き継ぎなどの手続きが必要になります。
一方で、墓じまいをする場合、遺骨の移転や墓石の撤去などが伴います。
誰かが継ぐか、撤去するしかないんです
現祭祀承継者に遺言してもらう
現祭祀承継者が存命で長男に継ぐ意思がない場合、現祭祀承継者が存命中に次の祭祀承継者を決めて遺言しておくとスムーズです。
たとえば、次男でも、孫でも、従兄弟の子供でも、嫁いだ娘でも祭祀承継者になれますので、「次の祭祀承継者は〇〇にする」と書いておきましょう。
ただし、お墓の継承に関する遺言には法的な拘束力がないので、全員の賛成を得て書いておくのが必要です。
とても言いにくいですが、相続の話は大切です
現祭祀承継者に墓じまいしてもらう
長男も継ぐ気はないし、親族でお墓を継げる人が誰もいないときには、現祭祀承継者が墓じまいするのがとても有効です。
あなたが長男だったら、父親に墓じまいを勧めるのがとても重要になります。
この先お墓を継げる人はいないし、お墓があるのがかなり負担になる現状を伝えて、身体が元気なうちに墓じまいするほうが良いと話してみてください。
こうした対応はあなただけのためではなくて、子孫の将来的な負担を減らすために重要です。
みんなでよく話し合いましょう
墓じまいする手順と費用
墓じまいを行う際の手順は、次の通りです。
- 親族の了解を得る
- 墓地管理者の了解を得る
- 石材店に依頼
- 墓石撤去・更地化
- 新しい供養先に引っ越し
墓じまいにかかる費用は30~200万円程度とされています。
内訳はこんな感じです。
- 閉眼供養 ~3万円くらい
- 離檀料 ~10万円くらい
- 墓石撤去・更地 10万円/㎡
- 新しい供養先 3万円~
墓石撤去と更地化にかかる費用は、お墓のある場所や大きさによって変わってきます。
新しい供養先は、合葬墓なら3万円位/1体からあって、樹木葬だと10万円位からになります。
参考:墓じまいのやり方
墓じまいは1~2年はかかります
墓じまいの費用は誰が払う?
墓じまいの費用は、基本的に現祭祀承継者が負担することが一般的です。
祭祀承継者はお墓の管理者としての責任を持っているため、墓じまいを行う際の費用もその人に課されます。
ただ、祭祀承継者が亡くなった時点で墓じまいを決めたときには、家族間で話し合って費用を分担するのケースが多いです。
父親が亡くなって、お葬式のときに墓じまいが決まり、3人兄弟で等分に負担するなどです。
法律上、墓じまいの費用負担に関する具体的な規定はないですし、遺骨の移転先の費用や管理費なども考慮する必要があります。
建てるのも大変ですが、なくすのも大変です
お金がない時は?
お金がなく、墓じまいの費用が負担できない場合、いくつかの選択肢があります。
まず、費用の分割払いを検討することができます。多くの石材店や霊園では、分割払いが可能な場合があり、まとまった資金がない場合でも負担を軽減できます。
また、複数の石材店から相見積もりを取ったり、お寺に費用の相談をするのもおすすめです。
さらに、永代供養墓や共同墓地など、比較的安価な供養方法を選べば、長期的な負担を減らすことができます。
どうしても払えないときには、管理費だけ払い続けるという手も・・・
墓じまいのタイミングは?
墓じまいを行うタイミングは、一般的には次の祭祀承継者がいない場合や、管理が難しくなった場合に実施する家庭が多いです。
最適なタイミングを見極めるためには、現祭祀承継者がまだ健在なうちに話し合いを行い、今後の管理ができるかどうかを確認することが重要です。
というのも、墓じまいは2~3ヶ月でおわるものではなく、かなり精神的にも肉体的にもきついイベントだからです。
墓じまいのタイミングは遅すぎると管理が困難になるため、早めの決断が最良の結果を生みます。
最後におすすめの代行業者を紹介します
おすすめの代行業者3選
墓じまいするときのおすすめの代行業者を3社紹介します。
所有者や管理者がわからないときにも、一度相談されるのをおすすめします。
「わたしたちの墓じまい」たったの5.6万円/1㎡から
引用元:わたしたちの墓じまい
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引用元:イオンのお葬式
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基本的なサービスがワンセットになっています。
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- 墓地を更地に戻す
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すべてをワンセット「ミキワの墓じまい」
引用元:信頼のお墓のミキワ
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まとめ:お墓は長男が継がなくても大丈夫!
この記事のまとめです。
- 長男が墓を継がなくても法律上の問題はない
- 墓を継がないといけない人は決まっていない
- お墓を継ぐ人は遺言や話し合いで決められる
- 昔の「長男が墓を継ぐべき」という考えは明治民法の影響である
- 現代では長男以外の親族も墓を継いでいる
- 長男が継がない場合、次男や他の親族が墓を継げる
- 家制度は1947年に廃止され、家督相続の義務もなくなった
- 墓じまいをしても不幸や祟りが起こるのは迷信である
- 墓じまいには費用がかかるが、補助金制度の活用方法もある
- 長男が墓を継がない場合、親族全員で話し合いが必要である
- 墓じまいは今後の世代に負担をかけないための有効な手段である
- 墓を継ぐ人がいないときには、墓じまいが現実的である
- お墓を放置すると荒れ果て、周囲に迷惑がかかるリスクがある
- 祭祀承継者は基本的に1人
- お金がない場合は墓じまいの費用を分割払いにすることもできる
- 墓じまいの費用は現祭祀承継者が負担することが一般的である
- お墓の管理が困難になった場合は早めに墓じまいを検討すべきである
最後まで読んでいただきありがとうございました!
厚労省:墓地、埋葬等に関する法律の概要